総監修:東邦大学医療センター 佐倉病院 消化器内科
教授 松岡 克善 先生

イムランについて

監修:関西医科大学附属香里病院
院長 岡崎 和一 先生

イムランは、免疫調節薬というお薬の一種で、過剰に働いている免疫を抑えることで、炎症を鎮める働きがあります。お薬の特徴をよく理解して、主治医の指示通り服用しましょう。疑問や不安がある場合は、抱え込まずに主治医や医療スタッフにお尋ねください。

期待される効果

期待される効果

ステロイドを使用して炎症が治まっても、ステロイドを減量・中止することで再び炎症が起こる場合があります。イムランを服用することで、クローン病の症状再燃を抑えながら、併用するステロイドの減量や中止、そして症状のない状態を維持する効果が期待できます。

期待される効果についてのグラフ
服用を始める前の確認

服用を始める前の確認

イムランの服用を始める前に、下記の項目をご確認ください。該当する項目がある場合は、主治医にご相談ください。

イムランの成分(アザチオプリン)またはメルカプトプリンを服用して、アレルギーの症状(過敏症)がでたことがある。

血液検査で、白血球数が3000/mm3以下に減っている。

高尿酸血症・痛風治療薬を服用している。

妊婦または妊娠している可能性がある。

血液検査で、赤血球、白血球、または血小板の数に異常がある(骨髄機能抑制)。

感染症にかかっている。

出血しやすい体質または血液を固まりにくくするお薬を服用している。

肝臓の機能が悪い、または肝炎にかかったことがある。

腎臓の機能が悪い。

水ぼうそうにかかっている。

服用方法

服用方法

服用量、タイミングは主治医の指示に従ってください

患者さんの体質や症状により、お薬の量を決めますので、主治医の指示に従ってください。またイムランは、服用を始めてから効果が十分にあらわれるまでに3~4ヵ月以上かかることがあります。自己判断で服用を中止しないでください。

女性が薬を飲むイラスト
副作用

副作用

主な副作用

イムランの服用中に、次のような副作用があらわれることがあります。
下記のような症状がみられましたら、主治医にご相談ください。

吐き気

気持ちが悪くなったり、吐き気を催すことがあります。

全身倦怠感

風邪をひいた時のようななんとなくだるい感じがするなどの倦怠感や、筋痛、関節痛があらわれることがあります。

骨髄抑制

血液をつくる骨髄の機能が低下し、血液成分(赤血球・白血球・血小板)が少なくなることがあります。貧血の症状(赤血球の減少)、感染症にかかりやすくなる(白血球の減少)、出血しやすい・出血が止まりにくい・内出血が起こりやすい(血小板の減少)、などの症状があらわれることがあります。

感染症

発熱、悪寒、咳などの症状があらわれることがあります。

脱毛

抜け毛が増えることがあります。

膵炎

腹痛や背部痛、食欲不振などの症状があらわれることがあります。

その他に注意が必要な副作用

下記のような副作用があらわれることがあります。
副作用の早期発見のためにも定期的な受診が必要です。

ショック様症状(お薬の服用後に、寒気、震え、意識の低下などの症状があらわれる)

肝機能障害(黄疸など)

間質性肺炎(発熱、咳、呼吸困難など)

悪性腫瘍(悪性リンパ腫など)

普段より重度な下痢(泥状の便、水のような便など)

進行性多巣性白質脳症(意識障害、麻痺症状、言語障害など)

このほかに、発疹、血管炎、腎機能障害、嘔吐、心悸亢進、口内炎、舌炎、めまいなどがあらわれることがあります。

副作用早期発見のための血液検査

イムランの服用を始めた後に、白血球が減ったり、肝機能に影響が出る場合があります。服用を始めた頃は1~2週間ごとに血液検査を行い、その後も定期的に検査をうける必要があります。

血液検査のイラスト
NUDT15遺伝子検査

副作用リスクを調べるNUDT15遺伝子検査

監修:東北大学病院 消化器内科 助教 角田 洋一 先生

イムランを服用すると、一部の患者さんで副作用が起こることがあります。
この副作用の中でも特に日常生活に大きな影響を及ぼすと考えられる急激な白血球の減少と脱毛には、NUDT15という酵素が関係しています。
NUDT15の働きには個人差があり、日本人では、約100人に1人の確率でNUDT15が上手く働かないために、これらの副作用が起こるリスクの高い遺伝子型を保有していることが明らかになっています。
イムランの服用前に、NUDT15遺伝子を検査することにより、リスクの高い遺伝子型であるか否かを事前に判定することができます。
2019年2月に、クローン病の治療においてイムランの服用を行う可能性のある患者さんに対し、NUDT15遺伝子検査が保険適用となりました。
イムランの服用前に、NUDT15遺伝子検査を受けることを主治医と相談してください。

NUDT15の働き

イムランは体内に入った後、薬効を示す物質に代謝され、効果を発揮します。(活性化)

NUDT15は、この活性化したイムランの一部を不活性化します。

NUDT15の働きについての図解

NUDT15がうまく働かない患者さん

NUDT15の働きが弱い患者さんでは、活性化したイムランをうまく不活性化することができません。
これにより、イムランの効果が強く出過ぎてしまい、副作用につながりやすくなります。

NUDT15がうまく働かない患者さんについての図解
服用中の注意点

服用中の注意点

ワクチンの接種は、事前に医師に相談してください

イムランは免疫を抑える働きがあります。そのため、ワクチンを接種しても免疫がつくられず、病気を予防する効果が得られない可能性があります。
また、毒性を弱めた生きたウイルスや細菌でつくられた「生ワクチン」を接種すると、体内でウイルスや細菌がたくさん増殖してしまい、その病気が発症してしまう可能性があります。ワクチンを接種する場合は、必ずイムランを服用していることを医師に伝えて、接種について相談してください。また、生ワクチンは接種しないようにしてください。

イムラン服用中に接種してはいけないワクチン(生ワクチン)

・BCG
・麻疹風疹混合(MR)
・麻疹(はしか)
・風疹
・水痘

・ロタウイルス:1価5価
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
・黄熱
・帯状疱疹(水痘ワクチンを仕様)

(2021年4月現在)

出典 : 国立感染症研究所ホームページ(2021年8月確認)

妊娠を希望される場合

妊娠を希望される場合は、イムランの服用を調整する場合がありますので、主治医に相談してください。

女医に相談する女性のイラスト